久しぶりにフモトと東急ハンズの前で待ち合わせて、どこでメシ喰うたろかと言いながらヘラヘラ心斎橋を歩く。狭い道に車が通るので、ひととぶつかりそうになる。よく見るとそれはカーステン。声をかけると、ミナミでいい寿司屋はどこかと普通に聞かれる。驚けへんの?僕のこと覚えているのか忘れているのか。半年ほど前にはスペインのサラゴサで会った。そのまた半年ほど前には、ドイツのケムニッツとベルリン。パリでも会ったし、はじめて会ったのはロンドンのICA。遠くまで行ってるつもりでも、結局、他のひとが行きそうな場所にしか行ってないのかも。坂本さんがこの道端でのランデブーを知っていたということは、わかってくれていたのだろう。寿司食べたかな。僕らは今日も上海料理。
December 2006アーカイブ
大阪から雷鳥に乗ってモリナと金沢に行く。サンダーバードを避けたのは、雷鳥の方がゆっくり走るので寝れる時間が多いのと絶滅の危機にある古い特急の内装が嫌いでないから。昼前に着いたので、美術館に行くのか寿司を食べに行くのか迷うも、やっぱり美術館に直行。AtoZ はいろんな思いが交差したものの、このYNG部屋に入った瞬間にうわあああ〜と口から勝手に声がでた。次に入ってきた女の子たちもうわっ!って言った。作品を製作したというより、いままでの経験と思いが結晶のようにできあがったもののように見える。すばらしい。奈良さん、トヨシマくんおめでとう。奈良さんとgrafの作品を分けるというのは、この作品に至っては生木を裂くがごとくという感じ。それにしても、金沢で食べる寿司はなぜかいつも期待はずれ。のどくろもない。おいしいところに選んで行っているはずやのに。たまたま横に座った音楽家も第一声でのどくろを頼んで、ガックリきていた。富山ではハズレたことはないのに。
小麦粉中毒でパンを食べ足りないというUAからのSOSメールで気がついたことがある。関西を離れた関西人は多かれ少なかれ、みな慢性小麦粉中毒であることを。それはアレルギーとかではなくて、精神的に自分にはメリケン粉(大阪弁で小麦粉)が欠乏していると思い込む依存症のようなもの。パン、お好み、たこ焼き、それにうどん。関西に小麦粉輸出制裁をくわえられると、関西人はきっとしぬ。関西人の言うしぬとは困るという意味で、もちろん本当にしぬわけではない。お好みやたこ焼きやうどんは家で簡単につくれるけど、家でおいしいパンをつくるのはかなり面倒。神戸や京都にあれだけおいしいパン屋があるのに、パン圏の関西を離れるともうしんでしまう。小麦粉を食べるからといってお米を食べないなどと誤解はいけない。お好み焼きでご飯を食べるひとも多いし、京都のひとやうちの父親は、何を食べてもお茶漬けでしめる。たとえ、カレーにナンやパスタのあとでもデザートやチーズを食べるようにお茶漬けを楽しんでいる。でも気になって調べてみると関西での小麦粉の消費量は大したことはなく、長野県民が一番食べているらしい。知らんでえ。長野にいるときも僕のからだは小麦粉が足りないと脳からは赤信号。長野県民は小麦粉を何に使っているのだろうか。信州ワッフルとかあるんか?聞かんなあ。おやきとかそば粉を割るしか思いつかないけど。知らぬうちに何かに混ぜられているのか。
テンジン・チョダラク先生が亡くなってからは、なかなかチベットのお医者さんに診てもらう機会もなくなり、人気の佐久総合病院の人間ドックも一年以上予約がとれないので、久しぶりにロンドンでなじみの透視能力者に会いに行く。この人と45分間話しをすると気分がはれる。その透視能力者に、珍しく物理的な問題をいろいろと助言される。もっとお金を儲けようという意識をもたないと生活が苦しくなるよ、とか透視能力がない人たちからもいただくような助言を受ける。そして帰り際に、からだのこと心配しているようだけど、心配いらないよ。悪いところはないからね。そうそう、それを聞きたかったん。中性脂肪も視てくれたやろか。
夕食後いつものように7階の滞在先で作業をしていると、部屋の電気と音楽が突然消える。部屋の中はコンピューターのスクリーンの光だけが残る。週末のローラーブレーダーたちには慣れているせいか意外と冷静だった myくんとakちゃんが今度はちょっと高揚している。アジアで停電には慣れているせいか、マイ冷蔵庫がないせいか、僕はあまり気にならない。窓からからだを乗り出して外を見ると、真っ暗なエリアと、電気がついているエリアに分かれている。あとで聞くと、ドイツの送電線のトラブルらしい。歩いて数分の場所が影響を受けていないのに、この家を含めヨーロッパのいくつかの国でドイツの送電線の影響を受けている。遅ばせながら、高揚しはじめる。
23時頃、いつものようにエッフェル塔の先っぽが見える7階の滞在先で作業をしていると、ゴ〜っという軽い地響きを感じる。ローラーブレードや、とmyくん。窓からからだを乗り出して外を見ると、本当にローラーブレーダーたちがかなりのスピードで車道を走っている。金曜日の夜は、警察のエスコートでローラーブレーダーたちにパリ市内の車道を解放しているらしい。見た目には車のスピードと変わらないスピードで滑走するローラーブレーダーたちの圧倒感は、テレビで見た大量の鮭が産卵のために川を上って来る光景の力強さとイワシの大群のヴォリューム感。水を斬る魚の群れに見える。去年、取材でバイク好きのみなさんたちにご一緒させていただいたときのことを思い出し、ちょっと高揚してしまう。
メインの倉庫がある丹波篠山の澤藤に滞在する。篠山はちょうど、栗と黒豆の枝豆と松茸のおいしい季節。澤藤は箱鮨屋ながらも、名物の鯖鮨がちょうど旬。時化の日や、月夜の日は鯖が海面にあがってこないので、鯖が不漁になるという。その日もあまり鯖が届かなくて5食しかなかったのに、もう帰る日だったので一本いただく。それにしても鯖はどうしてこんなに過小評価されているのか。イギリスの鯖は暖流のおかげで、北海やノルウェーで捕れる鯖のように脂がのりすぎていることもなく、とてもおいしい。それに安い。それなのに鯖はパテにされてクラッカーに塗られて食べられるか、犬に食べられるか。今秋は、日本では長崎あたりの鯖が旨いらしい。
浅間山の噴煙が青空に漂っている。たまたま実家で母親と二人きりの午後。それもたしか誕生日。母親には誕生日は2つあって、ひとつは戸籍に記載されているオフィシャルな誕生日。もうひとつは、実際に生まれた戸籍上非公式な誕生日。母の父親が間違って届けたらしい。母はどちらを選ぶともなく、うまく使い分けるとかでもなく、なんとなく両方受け入れて生きている。誰にも覚えてもらえないのではないかと、今更ながら心配になる。面倒なので、はぐらかしているのか、それとも二頭追っているのか。暗くなる前に気づいたものの、ここは街からすこし遠いし、僕には運転ができない。自転車に乗って図書館の帰りにJAに向かい、せめて一番きれいで一番高価な花を探す。紫のりんどう、210円。それでもきれいに生けてくれた。
移動しすぎたのか、撮影の仕事の前日に大阪で高い熱がでる。大阪なので王先生に診てもらう。ただの疲れらしいけど、休めないのでボルタレンを処方してもらう。そして実は熱より気になっていたパリのmyくんの家で何かを踏んで痛いままのカカトも一緒に診てもらうことに。先生は僕を診察台の上にうつ伏せに寝かせると、看護婦さんを呼び入れ、足の裏をライトで照らすように指示している。この段階で思い出した。僕は裸足で歩くことが多いし手入れもしていないので、足の裏がかなり汚い。色も汚いし、質感も汚い。先生は、このあたりかなと固くなっている足の裏をピンセットでカチカチ叩くものの手が付けられない様子。ん〜んと考えた上で、先生は僕を椅子に座らせ、いつものように僕の目をしっかり見つめて言った。ヨドバシカメラに行って、ナショナルの角質クリアという角質を削るマシーンを買うように。電池式なのが難点であるものの、3千円ほどのものにしてはとてもいいとのこと。さっそくアルカリ電池と角質クリアを購入し、ホテルの部屋で夜も更けアルカリ電池がなくなるまで削り続ける。これかなり楽しい。白い粉が飛び、grafの家具職人になった気分。埋もれていた傷口も姿を見せ、刺さったものも取れているようす。保湿クリームを塗ると自分の足とは思えないほどきれいになった。手のひらみたいにツルツルやん。先生ありがとう。
シンガポール行きの飛行機は満席に近いのに、僕の横の席だけはちゃんと空いている。しめしめ。オンラインチェックインで直前に座席を空いているエリアに変更したのだった。し、しかし飛び立つ直前にすらっと背が高くてきれいな女のひとがとても身軽な格好で現れ、横に座る。そのひとはいきなり単行本を読み始めると、今度は僕に了解をとってから読書灯のアングルを調整する。ついでに僕の読書灯のアングルも微調整してくれる。あっけにとられていると、今度はスチュワーデスが新聞を勧めてくれるときも一緒になって新聞を選んでくれる。機内食のメニューを眺めていると目が合ったので、どれもおいしそうで選べませんねえ、みたいな顔をするとその女性は、このメニュー違う路線のものですねえ、すぐ代えてもらいましょうね、と僕のメニューをとりあげ、スチュワーデスに文句を言ってくれている。食事中ふと横を見ると彼女は食べながらも映画を観て、大泣きしている。ちょっとしてからまた見たら、今度は熟睡している。ランディングと共に目覚め、軽く会釈をしてそのひとはチャンギ空港の群衆の中に消えて行った。飛行機に乗り馴れた感じとすらっとした雰囲気をみると、シンガポール航空社員が乗務外で乗っていたのだと納得していたけど、もしそうでなかったらあのひとは誰なんやろ。
パリ国立図書館近くのMK2でウディ・アレンの新作 SCOOP を観る。前作 MATCH POINT の興行成績が悪かったらしく、ロンドンでの公開は決まってないという。ロンドン撮影の作品やのに。日本に来るのはいつになることやら。新作も MATCH POINT に続き、イギリスの上流階級とアメリカ人のアホなところがウディ・アレンらしく巧みに描けていたせいか、フランス人はヒーヒーよろこんでいる。でも僕が映画より印象に残ったのはこの劇場のポップコーン。上映前に炭酸水を買おうと売店で並んでいたら、前のちょっとかっこいいおばさんがポップコーンを注文した。巨大なサイズのポップコーンの入れ物を指差したあと、なにか説明をしている。店員の復唱を聞いていると、おばさんはポップコーンの塩味と砂糖味を混ぜて欲しいと注文している。それもまず砂糖味、そして塩味、再び砂糖味、最後に塩味と交互に入れて欲しいと。食べる順番は逆さまになるので、塩味から始まって、フィニッシュは砂糖味。一緒に行ったmyくんとakちゃんに聞いてみたけど、パリ風とかではないらしい。上映中、おばさんが今頃何味を食べてるのかちょっと気になる。僕も買って食べたいのかと自問してみると、買って食べたいほどでもなかった。
ドイツ・アイゼナにあるキリスト教系の小学校に通うカーラが改宗して仏教徒になりたい、と相談を受ける。キリスト教がいやになったのでダライ・ラマを紹介して欲しいと。ダライ・ラマもチベットのお坊さんたちも昼の12時以降はごはんを食べないよ、と決意を確認すると、そこは育ち盛りの女の子としては譲れないとこらしく、意外とあきらめは早かった。
バンコクの新しいスワンナプーム空港がどうも好きになれない。なんか遠くて広いだけで、これではバンコクが遠のいてしまう。タイ国際航空のラウンジも2階に上る前のラウンジの方が断然落ち着いていい感じ。そんな冴えない気分で新しいラウンジのトイレに入ったときのこと。ドアを開けた瞬間、目の前に広がるのはダークブラウンの落ち着きのあるきれいなトイレ。悪くない。そして僕の目の先には、ひざまづいてトイレットペーパーを一生懸命に取り替えるトイレ担当のシャイな感じのお兄さん。目が合うと、緊張で引きつり気味ながらも満面の笑みで welcome... 思わぬ歓迎のあいさつを受け、腰がくだける。トイレで welcome と言われたら、何と返せばいいのだろう。空港は新しくなって良さを失ったものの、タイ人の魅力はそのままやった。

