僧院で2時間半もの法話した後に、法王が会ってくださる。謁見予定時間の30分ほど前に通された宮殿内の応接間には仏像や観音菩薩像、それにタンカと呼ばれるチベットの仏画が数多く並び、その対面にはチベットの大きな立体地図が立て掛けてある。そうそうたるチベット仏教の覚者たちの像を前に少し緊張しながらも秘書のひとたちとなごやかに話しをしながら法王が現れるのを待っていると、見たこともないような見事な美脚の蜘蛛がふかふかの絨毯の上に現れる。あまりのその脚の美しさにみんな怖がることも忘れ、ついその姿に見とれてしまう。蜘蛛に続いて現れたのは白いプラスティックの容器を持った宮中のお支えのひと。慣れた手つきで蜘蛛をそっと容器に誘い込み、雨上がりの緑あざやかな宮殿の庭にまるでVIPをエスコートするように丁重に連れ出す。ここではどんな小さな生き物であれ殺生は行なわれない。こんなごく当たり前のことを目のあたりにすることで、いま僕たちの居る場所を自覚する。


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