June 2005アーカイブ

CONTAXとAGFAにつづき、今度はSIEMENSが携帯電話事業を台湾のBENQに売却。ロンドンのケータイ電話はSIEMENS。ドイツ大丈夫?それより自分がこんなにドイツびいきだったとは。

grafでの展覧会『8月のタイ』では皆を片っ端から骨抜きにしてくれ、DVD『S.M.L.』でも緊張する奈良さんの背中を巧みにほぐすハラマミさんに、大阪にいるので僕の硬く張った脹ら脛(ふくらはぎ)をなんとかして欲しい、とSOSメールする。このまま飛行機に20時間も乗れば、エコノミー症候群になってしまうと思う。もうダメだと思う。お待ちしてま〜す☆というケータイからの軽快な返事だけでも頼もしく、安堵のため息と共に血行がよくなる。ハラマミさんの足裏および脹ら脛マッサージは多くの大阪名物にも勝ると思う。師匠は台湾人と云うものの、台湾式より痛くなく、タイ人のように意識散漫ではなく、ヨーロッパで受けるリフレクソロジーより診断や効果も遥かに的確。空いている日と気分だけ伝え、コースも時間もすべてお任せ。自分のからだを少しでも知ってくれているひとがいるというのは、それだけで救われる。ハラマミさんの新しい職場は、西梅田のハービスエント6階。高級ホテルにあるようなスパにヘアサロン、エステサロンがずらりと並ぶフロアにある。男性は紹介または女性と一緒でないと入れてもらえないらしい。そう云われなくても、予約がない限りエレベーターからこの階で降りる勇気はない。降りてからも前進するのにフロアの空気に抵抗を感じる。用意してもらったのは60分のボディのオイルマッサージ。時間も短いのでおもに、背中と腕と脹ら脛。日本のスパだけあってパンツの上に用意された長めの海パンをはかされ、かなりガードされている。それでもやっぱり雰囲気に緊張するものの、背中が終わり腕をほぐされたあたりから催眠術にかかったように、からだがどんどん沈んでいく。からだの力が抜けて、話もまともにできない。そしてお腹がぐるぐると鳴りだす。あっ、リラックスしてますねえ。お腹が鳴るのはいいサインなんですよお、とハラマミさん。はい〜、リラックスしてますう〜。でも、ちゃんとしゃべれてないと思う。さようならあああ。

ウディ・アレンの『さよなら、ハリウッド』とジム・ジャームッシュの『コーヒー&シガレッツ』を立て続けに観る。久々に訪れる神経症的な世界での会話はとても刺激的。自分の中ではまさに80年代のサウダージ。ウディ・アレンは老いても穏やかになることを知らず、いまだにオドオドしているところがとても励みになる。『コーヒー&シガレッツ』の6分間だけの一話目はヨーロッパではいつもジャームッシュの長篇映画にカップリングで上映されてきたから何度も観ているけれど、今回観る白黒の画像がカラーのフィルムにモノクロームで焼いた感じで青っぽいのがすごく気になる。何かおかしい。二話目からははじめて。スティーヴ・クーガンのイギリス人のズルいのに間抜けな感じがすばらしく、ケイト・ブランシェットもかわいく、いやらしい。これら全て僕も備え持ち、ヨーロッパで花開いた気質。RZAとトム・ウェイツが共に医学と音楽に身を置く役を演じている。これは自分の中では医療人類学を勉強しながら、音楽の仕事もしていた90年代。

パリのみんなとROOMの壁で鑑賞会をしようと思い、大阪万博のドキュメンタリーDVD『日本万国博』を探すも大人気らしく、どこでも売り切れ状態。最後の店でも、レジの女の子に申し訳なさそうな顔で売り切れていることを告げられる。せめて同じ時代の映像にこだわろうと昭和の青春ノイローゼシリーズ6編の中から関根恵子(現・高橋恵子)主演で大阪万博の翌年公開の『成熟』を選んで、店唯一のレジに持って行く。サービスカードをおつくりしましょうか?という声が震え、顔が引きつっている。さっきは笑顔やったのに。胸には「研修中」というバッジがついている。サービスカードに押すハンコは踊り、3つ目を押す前にハンコを落してしまう。動揺している。原因はこのDVDとしか考えられない。たしかに「青い乳房がやわらぐ時」とか「秋祭りの夜に実る16才の成熟の恋」とカバーの裏には書いてあるけど、水着姿と首上のシャワーシーンしかでてこないよ。みうらじゅんのかわいい推薦シールも貼ってあるのに。DVD貸してあげよかなあ。ちゃんと目を見て、がんばって接客してくれたし。

今回はインスタレーションよりも写真で勝負をしたいというりっちゃん。gmの中に粗い木目のフローリングの床に四方白壁の部屋ができている。いいでしょ、とりっちゃんはドアを閉めて得意げに微笑む。うん、いい!部屋には窓もなく天井も低いので、狭くないのに圧迫感があって空気が密な気がする。気圧の高い海底ハウスにいる気分。気のせいか、気のせいに決まっているけど、動きまで鈍くなり捕らえられた気になる。2年前の作品よりも全てが洗練され、自信に満ちている。2年前に迷い込んだ世界をいまでは牛耳る志賀理江子。この2年間、ムダに過ごしてこなかったのが見てとれる。

24才のりっちゃんが同い年で違う生き方をしている人たちとの食事会が楽しかったと教えてくれる。結婚や仕事の話が最近よりリアルになったらしい。僕の同い年の間ではその手のトピックはすでに鮮度を失い、人間ドックに行くか行かないかがかなりリアルで旬なトピック。くも膜下出血は恐れるものの、ガンの早期発見に意味はないと信じ、ガン治療にも否定的なフモトは行かない派。納得できるまで行かないという頑ななフモトを夜を徹して説き伏せるものの、僕自身人間ドックに行ったことも行く予定もないのでどうも説得力に欠ける。別に人間ドック行かんでもええけど、急に大病で倒れられても、ちゃんとした保険に入ってないと満足のいく治療もしてあげられへんのが切ないわ、保険に入るためには人間ドックに行かなあかんと思うで、となおちゃん。そんな理由があるなら行くわ、と結局は奥さんの愛ある言葉で解決。みんなで涙ぐむ。

フモト宅で過ごす何もしない2泊3日の気だるい週末。夕食はうまい焼き物を食わしてくれるという炉端焼き屋か、と電話してみると断られる。ベランダから差し込む風が気持ちよく、ナポリの夕方みたいやなあ、ということでそんな感じの夕食をつくることにする。刺身用の鮮魚にレモンとオリーブオイルでカルパチオ。パスタは絶品のウ゛ォンゴレとポモドーロの2種類にベランダのハーブ類数種。旬のアスパラガスを茹でて、そら豆と赤と黄色のパプリカを焼く。パプリカは冷やして、オリーブオイルでマリネ。おお〜、風も気持ちいいし虫も飛んで来るし、ナポリの夕方みたいやん。でもこんなときに限ってステレオに繋いだiTunesのシャッフルは妙な選曲をする。

カエタ−ノ・ベローゾの日本公演最終日にチェロのジャックが招待してくれる。チェロのジャックとは、カエターノが「マエストロ」と呼ぶジャック。リオのジャックのこと。東京国際フォーラムのホールAに行くのは実ははじめて。何年か前の奈良さんの誕生日にビョークが招待してくれたのに日を間違って行けず、奈良さんに申し訳ないことをした幻のホール。誰かを誘っておいで、とジャックは2席用意してくれたので昨晩のお礼を兼ねて束芋を誘う。会場の関係者受付に並んでいるのは、ロンドンでの上司の服部さんをはじめ、なぜかご無沙汰している知り合いばかり。並んでいるひとたち同士は知り合いではないし、カエターノの知り合いでもなさそう。夢で見るような不思議な光景。5千人のホールが連日満員とはすごい人気。『トーク・トゥ・ハー』の影響もあるのかな。開演前からただ事でない熱気を感じる。静かなのに会場全体を包み込むこの気分が昂る感じは何なんだろう。カエターノが唄いだしてからも、それぞれが爆発しそうなほどに膨れ上がった風船のようなものを内に秘め、胸がはち切れんばかりな感じでちょっと苦しいほど。拍手ではなく、叫ぶことができたらみんな楽になれるだろうに。弱火でグツグツ煮られている感じ。さすがブラジル人。さすがカエターノ。公演後、楽屋に行ってみると小山田夫妻もいる。ジャックに紹介すると、カエターノはコーネリアスのことが好きだそうで、カエターノから聞いて知っているという。一同ビックリ!今度はジャックが、コーネリアスのケイゴだよ、と紹介するとカエターノは本当にうれしそうな顔をみせる。新幹線の最終に間に合いそうなので、盛り上がりを見せる場を後にし東京駅まで歩いて軽井沢方面に向かう。

東京で束芋のオープニングにちらっと寄って、そのまま大阪に行ってgrafでりっちゃんの展覧会を観てからインドに行こうと思っていたのに、インドの日程がなかなか決まらない。オープニングはあきらめて展覧会を後日観せてもらう方向に気持ちが揺らいでいると、オープニングには来てくださるんですよねえ、と束芋から尻を叩かれるかのようなメール。行った方がいいのかな?ではなく、なぜか突然目覚めたように行きたい!と思う。たしかに食事を用意してあるとも書いてあったけど。同じ言葉でも、今までの経緯とか人柄とかタイミングで受け取り方も大きく変る。そして行ってよかった。美しいギャラリー小柳に似合う直球勝負のすばらしい展示。また一段昇った感じ。するべきことはしたという感じの迷いのなさが余裕の笑顔と展示から見てとれ、圧倒される。見え隠れするスーパー妹・芋々の力も強し。道向かいのレストランではお待ちかね「お世話になった方々への夕食会」が準備されている。個室に長いテーブル。奈良さんも憂鬱な顔をしていたヨーロッパでのオープニングのあとのギャラリーが主催する、あの緊張するディナーみたいなやつ。僕は「お世話」なんてしていなので余計に緊張するが、左隣が都築さんというのに救われる。それぞれの席に名前のカードが置いてある。それも全員日本人なのになぜか英語で。主役の束芋が席につくと不思議と場が結婚式の披露宴のようになる。世話にしたおじさんたちに囲まれているからか。披露宴のように引き出物まで配られる。束芋がグリム童話を描いた本『カエルの王さま』に、巻き紙に筆ペンで縦書きの達筆な手紙が添えられている。展示を終えたあとに、それぞれに宛てて書いたらしい。すごい余裕。我々おじさんたちは女子からもらう手紙のようにテーブルの下でコソコソ読んで照れる。田名網先生は人生には使えるカードが5枚ある(らしい)が、束芋はすでに3枚ほど使ってしまったのではないかと、教え子の早足の成功を心配する。結婚に一枚必要かもしれないので、切ることのできるカードはあと一枚しか残っていないらしい。僕はまだカード使っていない気がする。

いつでもどこへでも逃げられるように、お金はなくとも飛行機のオープンチケットだけはいつも複数持っている。でも最近e-ticketが増えてきて無くす心配はないものの、それぞれのチケットの期限など覚えきれない。タイ国際航空からもらったアップグレード券も無くす人が多いということで紙券ではない。いま覚えているチケットだけで、14セクター分。逃げきる自信アリ。

BS2

テレビで石原裕次郎の『嵐の中を突っ走れ』をやっている。東京から田舎の女子校に赴任してきた正義感あふれる独身教師と、声のピッチがキンキン高くいつも笑顔でナチュラル・ハイとは思えぬほどノンストップで高揚しつづける純な女学生たち。歌のシーンがなくてもインド映画にみえる。