都築さんが束芋の受け持つ授業で特別講義をするというので京都に集い前夜祭。待ち合わせのレストランはガラス張りで、どこがドアかわからないおしゃれな感じのお店。一緒に行ったトヨシマくんとちょっと気後れしながら店の周りをうろうろする。そして、本当にドアがどこかわからない。この木の感じgrafっぽいやん、などと照れ隠しに言っていると、その木の部分がドアだった。あとで聞くと、このお店には本当にgrafが家具を納めているらしい。木村友紀ちゃんも合流し、3対3で向かい合ってみんなで愉しく都築さんの講義料を食い尽くす。都築さんは雑誌のダイエット企画がどうも上手くいっているようで、すごい勢いで体重を減らし、顔も縦に長くなっている。一方、僕はコーヒーと紅茶に入れていた3杯の砂糖を一切やめたのに、すごい勢いで体重を増やし、なんと現時点で都築さんと体重が一緒。次ぎ会うときはきっと逆転してる。
May 2004アーカイブ
待ち合わせをした心斎橋のソニータワーに行ってみると、プラープダーはスターバックスの椅子に座り、マジックで本にタイ語の字をデザインしている。観光はしなくていいと言うので、普通にコーヒーを飲んで話をする。プラープダーが脚本を書いた映画『地球で最後のふたり』の舞台は大阪とバンコク。さすがに大阪も詳しい。僕が連れて行けるレベルの大阪案内では満足しないと思う。話はお笑いになったので、吉本興業に勤める弟をたずねて、「お笑い博物館」に行ってみる。意外と面白い。でも、一番よろこんでいたのは一緒に来たgrafロンドンの前田ちゃん。プラープダーは前田ちゃんに一言、うれしそうだね。メインシアターである「なんばグランド花月」のドアを開けてみると満席の客席の先にあるステージにはコメディーNo1。坂田利夫のボケにこれまた意外と食い付くプラープダー。劇場から泣く泣く連れ出して、隣のTV収録用スタジオを覗いてみると、今度はチャンバラトリオがリハーサル中。廊下ではオール阪神さんがお弁当を食べている。お笑い好きにはUSJよりここの方が面白い。若手芸人専用の劇場「baseよしもと」の入り口にはすでに高校生くらいの女の子たちがたむろしている。プラープダー同様に言葉の可能性を模索する若手芸人の大部屋楽屋にも行ってみる。ネタ合わせの真剣さとコントの道具類はまるで映画の撮影現場のよう。この緊張感に僕らは興奮してしまうのだろう。夜はやっぱり「駒」でお好み焼き。儀式のようにおばちゃんに占われる。プラープダーは3回大金が入るらしいがもう既に1回入っているらしい。本人は肯定も否定もせずに、微笑むだけ。何でも釣るまではがんばるけど餌はやらんタイプやな、あんたは!と僕と同じことを言われている。おばちゃん、なかなか当たるだけに恐ろしい。1日の終わりはPUG27がライブをするDAWN改めNOON。知り合いが多いが故の和やかなムードと大阪の若くもないグループが故のおしゃれでないベタなパーフォーマンスにプラープダーも笑顔。結局、なんかいい日。
デヴィット・シルヴィアンまで来阪で、ライブを観にサンケイホールにでかける。梅田からgrafまでの通り道で、いつも近くを通るのにこのホールに入るのは多分20年振りくらい。今までいろんなところで会ったこの人のライブをここで観るのはすごい不思議な感じ。関西アートマダム御三家(通称)を見かける。そのうち二人はすぐ近くに座り、残りのひとりは前を通る。デヴィットの髪の毛が伸び、再び美少年の面影が。そして、弟のスティーブとツアーをしている。ふたりを一度に見るのはもしかして初めてかもしれない。楽屋に行くと、ゆかさんやリチャードもいるので急にアットホームな雰囲気に。スティーブに勧められ、残飯のおにぎりなどいただく。grafまでアートマダム2人とモリナホとおにぎりを食べながら歩き、スーザンのつるとんたんになぜか合流する。
プラープダーが神戸に来たので、タムくんがお気に入りのびっくり寿司を食べる。寿司の大きさより、タイ人のわさびのおかわりの量にびっくり。タムくんがワンルームマンションで彼の漫画をTシャツにプリントしてくれたり、アニメーションにあわせて独学のキーボードを弾いてくれる。エリック・サティが調子のちょっとおかしい日のような味のある演奏。サティを知らないというので、プラープダーがサティのアルバムをタムくんにプレゼントする。
誰もいない神戸の実家に戻り、昼寝をしてからgraf。スーザン・チャンチオロ展のオープニングイベントとしてライブをやっている。東京で本のプロモーションを終えたプラープダーがやって来る。もうすぐ公開の映画『地球最後のふたり』のために彼が書いた脚本が本になってでるらしい。日本に帰ってもタイはなかなか終わらない。木村友紀ちゃんの映像も上映される。もう夜も遅かったのでホームシアターっぽい雰囲気でみんなから暖かい賞賛を受ける。写真ではわからない面白い良さがある。でも、バンドが始まるまで待てない。帰らないと。寝ないと。
ホテルをチェックアウトし、フライトまで時間があるのでポッドに電話してみると、冴えなくうれしそうな声。起こしたのか、と聞いてみるとマッサージ中とのこと。電話を切ろうとすると、話しだすので、マッサージされながら気持ちよさげというか悩ましい声のポッドと少し話す。マッサージの後にコーヒーを飲む時間があるかと聞いてみると、写真撮影があるとのこと。う〜ん、ポップスター。僕もまねしてマッサージに行く。写真撮影はナシ。バンコクから直行で帰れないチケットなので、ひとまず赤道直下のシンガポールまで下って、そこから大阪行きの飛行機を待つ。今度は時間があるので空港で泳ごうと海パンを持って来たのに、あまりにだるいのでここでもマッサージ。でもシンガポールのおばちゃん、下手すぎ。バンコクが恋しい、おばちゃん。ラウンジでStrait Timesをペラペラめくっているとなんとウィルキーが笑顔で女子中学生6人と大きく載っている。シンガポール国際映画際でウィルキーが彼の生徒たちと作った映画が短編の部門で監督賞をもらったと書いてある。夜も遅いので、電話はやめて空港からおめでとう!とメールする。彼らしいやり方で「考える人間」を育てている。ウィルキーと生徒たちの笑顔を見ていると、たまらなくうれしくなり新聞を手放せない。その記事を破いてポケットに入れて飛行機に乗る。
バスに乗る時間を計算してタイミングよくチェックアウトしたつもりが、とんでもない請求書で予定が狂う。タイのほとんどのホテルは市内通話は1コールで10バーツ(約30円)。なんで、インターネットはほとんど繋ぎっぱなし。ダイアルアップでチェンマイのアクセスポイントに電話したはずが、一度だけバンコクにアクセスしていたらしい。それも最長の2時間弱。10バーツに並び一つだけ2桁違う数字が並んでいる。このホテル1泊より遥かに高い額。ごねてみるものの、オレの給料から引かれる、とらちがあかないしバスの時間が迫っているのであきらめて支払う。バスターミナルに着くのも遅れてしまい、予定していた12:30のVIPバスはすでに売り切れている。次の14:45発のバスまで時間があるので、まりちゃんに救援の電話すると、再びバスターミナルにバイクで登場してくれる。また行ったことのない川沿いのよさげなレストランに連れて行ってくれる。こんなにすぐにまたこのバイクの後ろに乗れるとは思ってもみなかった。VIPバスはちょっとやり過ぎなくらい立派。かなり大きなシートが所狭しと3つ並んでいる。そして、歯医者の椅子くらいリクライニングするから8列しかない。かなり無茶。通路が狭すぎて普通には歩けない。かなり楽と思いきや、凸凹道なので、からだが軽く宙に浮いたりしている。気持ちいいのか、しんどいのかよくわからない。まあ、600円のVIPなので許す。チェンライのバスターミナルにはアンクリットがOISHI!というタイで流行の甘い日本緑茶で出迎えてくれる。今日買ったというトヨタのかなり古い軽トラックで、今日引っ越したという新居に街で唯一のギャラリー経由で向かう。庭ではもうアンクリットの息子が近所に住む新しい友達と遊んでいる。お父さんから譲り受けたレストラン経営から手を引くために、奥さんのためにはじめたという木と竹の仲介屋を兼ねる新居。毎朝5時に市場に行って昼過ぎまでレストランを経営し、午後からアーティスト活動という今までの生活を一新して、生計は奥さんに任せて、アーティストに専念する壮大なプラン。アーティストとしての生き方を模索しながら積極的に地元でがんばる姿にココロうたれる。マットレスを運び込んだり、いきなり引っ越しに巻き込まれる。その代わり、最初のお客さんということで歓迎を受け、バンコクへのフライトまで空港近くの湖畔のレストランで家族と夕食を共にする。食事中、アンクリットの奥さんは、木や竹ではなくジュエリーショプをしたかったと自分で作ったという胸元に光るネックレスをいじくりながら口元を歪める。そんな目で見られても僕は何もできない。今晩向かうは、この旅3回目のバンコクのドンムアン空港。
ソンテウという赤い乗り合いタクシーを借り切ってチェンマイでの目的地ESC(empty space chiangmai)に向かう。今日はきっと40度くらいまで上がっていると思う。1年で一番暑いこのソンクランという旧正月の季節、特に今年は雨が降らずに暑いらしい。ソンテウは座席が風に吹きっさらしなので、ヘアドライヤーの熱風を顔に浴び続けているようで火傷しそう。車が停まると、ちょっと涼しくなる。高校生の夏休みにアルバイトでクウェートに居たときも車に乗るとこんな感じだった。あの時は45度くらいあった。ESCはカミンのThe Landのすぐ近く。ドイツ人のマニュエルがタイ人の奥さんのノイと運営しているアーティストインレジデンスのようなもの。アーティストがいないときは、彼らの家。敷地の真ん中には池があり、蓮がきれいに咲いている。田んぼがあるので、米も穫れる。野菜もある。二人とも演劇の出身なので、ちゃんと舞台があり、催し物も行われる。今日はバンコクから来たノイのおねえさんがダイニングテーブルで胡弓を練習している。MDに採らせてもらう。そして何より素晴らしいのは、庭にアンクリットの顔の付いた気持ち悪いキリンがいること。ホテルに戻ってからだを冷やそうとプールに入るけれど、水が温かい。普段はクーラーはからだに悪いと思うけど、これだけ暑い場所にいると、クーラーにからだを救われる。プールサイドにある新聞の一面は、アピチャポンの映画『トロピカル・マラディ』がタイ映画としては初めてカンヌ映画祭コンペ部門に招待、という記事が飾っている。みんなすごい。タマリンド・ヴィレッジにまりちゃんがバイクで再びやって来て、郊外のレストランに連れて行ってくれる。バイクの後から見ると街が違って見える。ホーチミンのジュン・グエン・ハツシバくんのバイクの後ろに乗せてもらった時もそうだった。そこに住んでいるまりちゃんやジュンの視線で街が見える。
何も予定の入っていない1日。元来、バンコク滞在はこうあるべき。TADUの新しいスペースに行ってみると、デレクターを辞めてギャラリーにはいないはずのラッカナがいるではないですか。なんとなく会える気がした(ほんま)と言うと、ランチに連れて行ってもらえることに。たまたまギャラリーでミーティングがあったらしい。誰にも聞かずによく一人で来れたわねえ、と驚かれる。大通りにあるけれど、確かに来るのは面倒。こんなところにギャラリーを作っていいのだろうか。ラッカナによると、夏に地下鉄が開通するとここを中心に栄えるらしい。自分たちはいつも開拓者だと。すばらしい。展覧会ではフィリップのビデオの作品がいい!盲目の女性が、恋はあなたを盲目にする、と唄っている。実際、この人の歌がいいので少し感動してしまう。マッサージ師作家のスワンさんもたまたま来ている。マッサージしてやろうか、と誘われるがお腹が空いていたのでランチを優先。でも、スワンさんのマッサージTシャツかなりいい。動物園Tシャツなんかよりいい。暑いレストランでラッカナにソンクランのことを聞いてみると、最終的にはなんと600人死んだらしい。警察は今年の死者を900人に見積もっていたので、胸をなで下ろしたとのこと。すごいな。リオのカーニバルのブラジル人もびっくり。grafのショップ用にTシャツを頼まれていたので動物園に行くと、なぜかオレンジの袈裟を着た若い僧侶だらけ。動物園に入るのもタダなのだろうか?そして、肝心のTシャツはもう売っていない。そう言えば、スタッフもあのかわいいのような気持ち悪いようなTシャツはもう誰も着ていない。
やっぱりAbout Cafeのイベントに行こうと、出発前にシンガポール航空のサイトからバンコク行きのチケットを買い、シンガポールからは大阪行きではなく、バンコク行きに乗る。シンガポール・チャンギ空港でのトランジットでは泳いでいる時間はないので、ラウンジでシャワーを浴びる。熱めのシャワーを浴びても、ぼーっとしてる。眠たくないのにぼーっとしている。仕方がないのでフライトまで椅子に座ってぼーっとしていることにする。夜、バンコクでホテルにチェックインしても、まだからだと意識がチグハグ。About Cafeに行くと、外まで人が溢れている。中では実験的な音楽をやっている。トヨシマくんと来たときは誰ひとり居なかったのに。ポッドが僕を見つけてびっくりしている。笑らおうと思うと引きつり、話そうと思うと咳がでる。これは帰って寝た方がよさそう。
毎日毎日、吐き気のするようなニュースばかりが新聞の表紙を飾っているのはイギリスもタイも日本も同じ。今日はかなり素敵なニュースがイギリスの新聞各紙のトップを飾っている。トレーシー・モーリスという無名のマラソンランナーがロンドン・マラソンでイギリス人のなかではトップだったとのこと。このロンドン・マラソンはアテネ五輪のイギリス代表選考会を兼ねており、彼女の記録は規定の範囲内なので出場権を得ることになるらしい。この人はリーズという地方都市のコンタクトレンズ屋の店員で、本格的にトレーニングを始めたのはごく最近で、年もすでに36歳とアスリートとしては遅すぎるデビュー。自己ベストを1時間(1分ではない)以上更新しての記録。かなり地味な人でメディアとの受け答えも面白い。ヨーロッパのマラソン選手が高地トレーニングを行うとある有名な場所でアテネ五輪に向けて練習するのかと聞かれても、そんなところがあるのですか?と本当に何も知らない様子。ゴール直後にメディアに囲まれ、ゴール付近で待ち合わせをしていた旦那とは会えなかったらしい。アテネに行く間、コンタクトレンズ店はどうなるのだろうか。映画のような話。ボアダムスがニルウ゛ァーナにアメリカツアーのサポートを頼まれたときに、メンバーがカレー屋のバイトを休めないでツアーを断ったという伝説を思い出す。この夏、日本中が3人の日本人女子ランナーを応援する中、僕はこのコンタクトレンズ屋の冴えないトレーシーを応援する。新聞も読み終わり、grafのロンドン事務所に置いてあった荷物をとりあえず、日通ペリカン便で日本に送る。今後イギリスに住み続けるにしても、一度荷物をなくしたい。結局、15箱で400キロほど。20年間の欲望のかたまり。ほとんどが本とCD。それでも、送りきれずに少しまだ残っている。でも片付けはもう限界。僕の片付けも自己ベスト。そろそろ熱帯に戻るためにヒースロー空港に。
花粉症がひどい。日本では何の症状もでなかったのに。詰まっていた鼻は垂れ、目はかゆく、からだは熱く、咳がとまらない。この咳が一番辛い。花粉症ではなく、ロンドンで流行の喘息ではないかと思うほど。何もできない。花粉症仲間のりっちゃんが事務所に現れたので、近所に食べれそうなものを食べに行く。二人で鼻を垂らしながら。昨日アルフォンソ・マンゴをあげたイ二ゴが、すごくおいしかったとわざわざ電話をくれる。スペインからやってきたお母さんと食べたそうで、そのおいしいマンゴにアルフォソノとスペイン語が付いていることにお母さんはいたく感動したらしい。でも、このアルフォンソはポルトガル語と思う。まだ言えてないけど。
トリスティンとセラの庭で持って来たマンゴを食べる。この二人とはタルウ゛ィン・シンのレコーディングでムンバイに滞在して、マンゴをたくさん食べた仲。息子のマックスはもう少年の顔になってきている。トリスティンも去年はタイのお寺に滞在してレコーディングをしていたらしい。昔、仕事をしたことのあるミュージシャンのともだちが、コカインの中毒でセラピーとして訪れたこのお寺で人生を取り戻し、ミュージシャンとして活動をここではじめている。トリスティンがアップル・マッキントッシュ社で働く友人を通してジョブス社長にこの話をしたところ、G4をたくさん寄付され僧侶たちや元ドラッグ中毒患者がこの寺で音楽を制作している。セラピーは解毒の錠剤を胃に入れてから2ガロンの水を飲んでから吐いて浄化する、という音楽より激しいもの。ブリックレインに現れたオカクさんのまぶたの上にはキラキラした大きな粒がたくさん付いている。彼女のアニメーションはかなり面白い。良質のユーモアがあれば、それだけでかなり信用できる。いい感じの音が入っていれば、もっと信用できる。それで、ビジュアルがいいので笑える。事務所に戻ると、大量の荷物がいつも待っている。今回のロンドンの主な目的はgrafに置いてある荷物を片付けること。箱を開いても開いても、どんどんでてくる。肥大して手のつけられない自分の荷物を見ると自分を嫌い、吐き気がする。欲望と執着のかたまり。僕のチベット医学の先生曰く。あなたのカバンは壊れやすいでしょ。それは詰め込みすぎるからです。あなたのからだも同じです。欲望をからだに詰め込みすぎるからからだは壊れます。まさに。自分ではどうすることもできないこの欲望。使わないのもはすべて捨て、ロンドンの友達が使えそうなものはすべてあげる。それでもこれだけ残る。この荷物も欲も燃えてしまえばいいのにとよく思う。でもgrafが燃えたらきっと怒られる。
マーク・サンダースがバイクで登場。grafの事務所にバイクを預けて、労働者の集まるカフェでボリュームある朝食。チップス、ビーンズ、目玉焼きにベーコン。マッシュルームと焼きトマトとポテト抜きのイングリッシュ・ブレックファースト。それにすごく濃い紅茶。忘れかけていたちょっと違う種類のおいしさ。ヘビーな朝食を食べながら四国旅行を計画する。ちょっと訳あっておごらせて欲しいと言い、ポケットからペニー(2円)と2ペンス(4円)と5ペンス(10円)の小銭ばかりでできて、テーブルに並べるマーク。すごく適当に7ポンド35ペンスくらいかき集めて、受け取る方も全然OKという雰囲気。ごちそうさま。訳は分からずまま。事務所に戻った途端にこれまたJAM展参加のトモくんがブリックレインに居るとの電話。トンボ帰り。扱っているテーマは今風なのに、1つの作品に十分に時間をかけてギャラリーも増やすどころか減らしていくなんてすごい堅実で自分のペースを守れるから作品の質が落ちないのだろう。今度はムクルがブリックレインに来ると連絡が入る。ジュースを買って彼が前に住んでいた元学校でアーティストたちが住んでいるビルの庭に春の日を楽しみに行く事に。おおきなカメが何匹もいる。でも前はもっといた。先月までタイに行っていたムクルからチェンマイのESCのことを聞き、あそこに忘れ物をした気分になる。帰らなければ。バングラディシュ系のスーパーマーケットに積み上げられいて気になっていたアルフォンソ・マンゴを箱ごと買う。ムクルと一箱づつ。毎年、この季節インドのゴアからやってきて、数週間しか手に入らない。ムクルの家にはいつもこのマンゴの箱があって、箱からいい匂いがしていた。やっぱりマンゴはインドが一番。この時期、インドの街を歩くと、悪臭に混ざってマンゴの甘い薫りが鼻の粘膜にこび利付きクラクラする。ムンバイ周辺だけで穫れる絶品。腕にマンゴの箱を抱え、自慢げにブリックレインを歩く。日本にはジュース用に缶詰で輸入している業者があるらしい。前田ちゃんが明日から一足早くバンコクに寄って大阪に向かうというので、夜はセントジョンで夕食。僕はきのこ、前田ちゃんはうなぎ。巨大なデザートは分けることに。きょうはいったい何度ブリックレインを歩いたことか。なんかロンドンぽい食生活の1日。
JAM展で出会ったWorld Design Laboratoryのユウイチくんはロシアの軍服の新しい解釈をしている。これはきっと社会主義デザインファン心をくすぐるに違いない。ブライアン・イーノの事務所で日本語を教えていたリカちゃんも転職して証券会社で立派に働いている。そう言えば、脚フェチのイーノ先生のコレクションに彼女の脚は納められている。脚が見れない、なんとなく。
あさこちゃんの運営するエクリクティックではなんと犬の服の展示が行われている。紙でできた犬にはちょっとココロ奪われる。でも、犬にはうるさいイギリス人だけに、犬の服に怒らる人もいるらしい。地下でおいしいランチが食べられる。野沢菜のごはんとみそ汁をごちそうになる。真っ赤なマッサージチアーに座りながら。新聞と牛乳を買った帰りにポール・デイヴィスのアトリエに寄ってみると、訳も分からず服屋に連れだされ、コムデギャルソン/フレッドペリーのポロシャツの横に並んでいるハードカバーの大きな本を渡される。そして、本を取り戻して最初のページにサインをしてくれる。For Fumiya, What can I say? Apart from "things". Paul
ホワイトチャペルのとある行きつけの店でバングラディッシュ料理を食べる。昔、ロンドンから日本に一時帰国して日本食を食べるとからだが喜んでいた感覚に似ている。何か深いレベルでの満足感。自分は何人に向かっているのだろうか。
パリでの反省を踏まえて、意気込んで早めにロンドンのみんなに連絡するも、今日はイースターホリデー。知らなかった。あまり連絡がつかない。でも、滞在中に荷物整理をしなければいけないので、実は遊んではいられない。夜はロンドンのベトナム料理。やっぱりこっちの方が好きかも。パリのフォーもおいしいけど、にんにくとセロリのきいたスープのフーティユはかなりおいしい。別に僕が特別ベトナム料理が好きな訳ではない。みんなが好きなだけ。ソンクラン(タイのお正月を祝うフェスティバル)で150人死亡、とイギリスの新聞にも大きくでている。今週に限れば、イラクより危ないかも。
ROOMで最後の目覚め。大きく立派ながらも、他の友達の家に比べて豪華どころか掃除下手の細木さんらしく、かなりちらかっていて汚かったりするのに、どうもここは居心地がいい。特に寝心地がよく快眠できる。ベットも折りたたみのソファベットだったりするのに。ここにいるときはストレスもなく、ちょっと歩けばパンもおいしく、身も心も健康な気がする。世界の中でも大事なスポットのうちのひとつ。grafの企画が噂される『快楽オリンピック』が行われたら、ここも参加選考のリストに入ってくるだろう。パリにまだ6日目。もう長い間滞在している気になる。トヨシマくんとタイに行ったのもすでに遠い昔の気がする。RERからパリの空を眺めながら、これからいい季節になるんだろうなあ、と暗い冬から明るい春になっていくヨーロッパ独特の喜びを思い出し、名残惜しい思いをする。タイもヨーロッパも豊な生活の基盤ができている気がする。grafはそれを大阪で作ろうとしている。がんばって欲しい。それができるまではアジアとヨーロッパを反復。CDG空港でふと山協のことを思い出し、電話してみる。お菓子屋になっているとのこと。言語学の博士からすごい方向転換。とてもしあわせそうで元気そう。もっと早く電話をして、せめてコーヒーにでも誘えばよかった。そして、6日間もいたのに連絡しなかった他の友人たちのことを思い出して、より名残惜しくなる。でもロンドンに着くと、前田ちゃんとりっちゃんがちらし寿司で歓迎してくれ、気分はすでにロンドン。
お昼はまたまたべトナム料理屋で、今度はフォーガー。大盛りはボリューム満点。天気もよく再び春の気配。自分が一番しあわせかと思いきや、そんなことはなかった。台北にいるダムタイプ高谷夫妻から川湯温泉に行ってきたとメールがくる。うわあああ、行きたい。そんで、今日はやっとROOMでDVD『S.M.L.』とヤノベくんの映像2作の上映会とDVD即売会。毎日、ラテン人のように食べることしか考えていないような生活。それもこれも、実はこの日のためにパリに居残っていたため。大阪ではKPOで奈良さん、ヤノベくん、トヨシマくんがトークもしている。細木さんはアトリエ化したギャラリーをきれいに片付けて、自分でミシンを踏んで作ったスクリーンを掛けて、椅子を並べる。卓球台に機能を変えた座れない椅子も含め20脚ほど。なんで一人暮らしの家にこんなに椅子があるのか。探せばもっとあるはず。なんと、SとMとLのスリーサイズの椅子まである。3年前の未発表の細木作品らしい。細木ファンならたまらない。マコトくんがいくつもの問題を解決して、webcamで映像までライブで流している。僕には解決された問題が何であったかも分からないまま。ギャラリーには入りきらないほどの人たちが来てくれる。前の方の人たちが静かだと思いきや、画面のブレに酔って気分が悪かった模様。パリ郊外での地味な上映会も生で発信していると思うと、気持ちが高ぶる。たとえ誰も見ていなくても。上映会の後はもちろん、モロッコ料理。こんな郊外にあるモロッコ料理屋のタジンが何故にこれほどおいしいのか。
トヨシマくんはシンガポールを経由してもう大阪に戻ったとのメール。僕はあと2週間ほどかけて同じルートを戻る。とりあえず今日は、街外れのおいしいパン屋まで歩いてサンドイッチを買いに行く。その場でバゲットを切り開いてサンドイッチを作ってくれる。パンがとびきりおいしいので、サンドイッチもたまらなくおいしい。パンはドイツの方がおいしいし、コーヒーはイタリアの方がおいしい。でもこのサンドイッチはかなりうまい。クルディテも入れる?とパン屋のおねえさんに聞かれ、入れようか入れまいかを考えるふりをして、クルディテってなんやろ?と悩む。ちょうどお昼時で長い列もできてるし、クルディテって何ですか?とも聞けるようなのどかな雰囲気でもない。クルディテ入れます!入れてよかった。レタスやトマトが入った方が断然おいしい。今回パリで食べた中で一番おいしい食事かも。夜はビストロで鴨料理を食べる。おいしいものの、肉は食べなれていないので、胃がもたれて苦しい。やっぱり野菜かサーモンにしておけばよかった。実はきょうのメインイベントは鴨料理ではなくて、メールで案内をもらったイベント。カフェでエレクトロニカを聴くというコンセプト。う〜ん。やっぱり、バンコクで汁麺を食べながらタイトロニカがいい。それか、サンドイッチ。
クスクスのスープはまだ残っているので、今度はスープだけを細木さんとランチとして食べる。パンで食べるクスクスのスープもかなりおいしい。夜は久しぶりに半野くんに会う。こちらからは細木さんやマコトくん、あちらからは青木くんなど音楽家チームを連れてやって来たので、かなりの大人数でベトナムの鍋を囲む。鍋は真ん中で二つに分かれていて、スープが違う。でも、火の勢いが強いので敷居を越えて2つのスープが混ざる。実は混ざった方がおいしいのでは、と味見してみる。混ざらない方が絶対によい。
午前6時前に自然に目が覚める。ソファのトヨシマくんは昨夜の「すばらしきタイ旅行」上映会中に寝ついたままの姿を見事に保っている。服も姿勢もすべてそのまま。前田ちゃんが2階から起しに来るまで動かない。まだ真っ暗なジャンティの街を歩き、空港へ向かう二人を駅まで見送る。朝は好きではないけど、朝の来る前のこの時間は何とも気持ちいい。トヨシマくんとの二人旅もこのジャンティ駅の無人改札口でとうとうおしまい。これから明後日の朝に大阪に着くまで、トヨシマくんは横になって寝ることはない。人ごとながらこれはしんどい。本人は分かっているのだろうか。午後には再びROOMにマコトくんが現れ、日本で買って持って来たiBookをパワフルにしてくれる。コンピューターと一緒にいるマコトくんはそれだけで頼もしく見える。夜は男3人で昨日のクスクスの残りを食べる。トヨシマくんはロンドンでの1日を終え、シンガポールにUターンする飛行機に乗り込んでいる頃。
早朝パリCDG空港に着き、RER/B線で細木さんの眠る(生きてる)ROOMを目指してジャンティ駅に直行。春のパリ。天気が良くて気持ちいい。シンガポールのスチームバスのような空気とは違い、肌をちょっと刺すような朝のひんやりした乾いた空気が心地よい。電車の窓から見上げるパリの空はとても高く、こんな日はいい事しか思い出せない。この時期にヨーロッパに来ると、ここより良い場所はない気さえする。バンコクからカバンに入っていた缶コーヒー2本。狭い座席で荷物に囲まれたトヨシマくんと向かい合い、いやあヨーロッパやね、とは言わずともそんな感じで乗りなれないパリの朝の通勤電車で甘いタイの缶コーヒーを飲む。B線は街の中心地を縦断するので、この時間はシャルル・ドゴール空港からの旅行客と日常を生きる通勤客が混じり合う。そんな人たちと相席になり、お互いの違った時間が交差する。ROOMのベルを鳴らすと、細木さんは意外とぐずらず起きてくる。そして、コーヒーまでいれてくれる。この人もまた違う時間を生きている。1時間ほどするとgrafのロンドン事務所所長の前田ちゃんもロンドンから合流。みんなでコレットのサラに会いに行く。それぞれ以前からメールのやり取りはしていたのに、彼女に会うのはみんな初めて。ほんとに感じのいい人でいろんな提案をしてくれる。ポール・デイヴィスの本までいただく。分かれ際に、あなたたちって本当に日本人?名刺はくれないの?と彼女が笑いながら名刺をくれる。トヨシマくんがパリと言えばサラダが食べたい、ということでカフェでサラダを食べてからパレイドトキオに向かう。ここは天井が高く自然光が存分に入り、明るい美術館の所々で小学生の授業が行われている。作品も小学生もたくさん光を浴びて眩しいほどに輝いている。夜はROOMにアーティストたちが集い、クスクスとBBQ。美術館にも作品のあるマイケル・リンに電話してみると、彼はアメリカのセントルイス美術館で個展の準備をしているというのでBBQには来られない。トヨシマくんはフランス語訛りの日本語でボソボソ独り言を言いながら、羊肉をかなり上手に焼いていた。
朝食は軽めにすませて、タクシーでドンムアン空港へ。空港までの高速道路からの景色はもうすっかり見慣れた風景。そして、飛行機でシンガポール・チャンギ空港へ。この空港はいつでも空いている。もちろんパスポート・コントロールでも待つこともほどんどない。タクシーも待たずに乗れる。タクシーが列をなして待っている。英語が上手なタクシーの運ちゃんが、おいでおいで!と手招きしてくれる。英語はシンガポールの公用語。静岡弁みたいに言葉の最後にラーが付く訛りのきつい英語。南国情緒たっぷりで、しかもきれいに整備されたこの景色にはなぜかココロが踊らない。いつも本当に用事を済ませて、すぐに去ってしまうシンガポール。嫌いではないのに。なぜかつまらない国というのがインプットされてしまっている。愉しいはずなのに、あまり愉しくない東京と似ている。飛行機が着陸してから1時間もしないうちにもうシンガポール美術館に到着。手短かにミーティングを終え、リトル・インディアにあるPlastiqueKineticWormsでイヴォンとシンに会う。ここに来るとほっとする。トヨシマくんがシンガポールが初めてだというので、マーライオンを見たり普段しない観光に日本語のできるシンが連れて行ってくれる。マーライオンを見るなんていうのは20数年振り。行ってみるとなんと、シンの作品である椅子がマーライオンの真後ろに設置してある。こんなところに作品が置けるなんてすごい!あまりに暑くてシンガポール・リバーの川岸まで歩くのが精一杯。景色のいい観光客用のレストランで二人の持ち金をはたいてこのシンガポール半日旅行を終えることにする。あわびとか蒸したガルーパとか豪華な海の幸が次から次へ運ばれてくる。海の幸に混じって、お待ちかねのウィルキーもやってくる。去年のロンドンでの展覧会にUFOの作品で参加してくれたアーティスト。最近は、政府から6年分の助成金をもらって教育に力を入れているらしく、女子中学生に美術を教えている。「考える人間を作っている」と良い事を言う。それにしてもウィルキー、恐縮しているのか、よく見ると椎茸とか人参とかばっかり食べている。値段も気にせず、あまりに無計画にオーダーしたので、二人の所持金合わせて、空港までのタクシー代ぎりぎり。ちょっと不安だったので、シンに5Sドル借りる。でもそれも使うことなく2Sドル(150円)余らせてシンガポールを去る。プチ豪遊。ハハハ。この暑さとも暫しの別れ。

