Archive for 12月, 2005

singles





このあいだ日本に帰ったとき、実家に置いてあるCDを少し持ってきた。いつもパリに何を持って帰るか悩むのだけど、今回は’90年前後に買ったマキシシングルと’70年代のクラウトロックをピックアップ。これはそのマキシシングルの一部。



A Man Called Adam / The Chrono Psionic Interface


A Man Called Adamの’91年リリース作品。Big Lifeから。
ピアノやアコースティックギターによるジャズのフレーズがきいたアンビエントな4つ打ちハウス。そういえば当時そんなハウスが流行ったっけ。Larry Heardにも通じる。
ややスローテンポ気味のAndrew Weatherallのまったりフェチなリミックスが違う味わいを添えている。





Coldcut / Autumn Leaves


リリース前にメーカーからもらったCDで、limited editionと書いてあるものの、ただ曲名を書いた紙きれ1枚が入っているだけなので何年に出たのかわからないけど、’90年前後だったような?
『Autumn Leaves』のfull rub、naked、radio edit他4曲。このCDは表面に印刷も何もされていないから、パソコンに読み込んでみてわかったのだけど、曲順はめちゃくちゃ、おまけにジャケットとはタイトルの違う曲が入っていた。珍しいなぁ、こういうの。
Joseph Cosmaの『枯葉』のリメイクは数多くあるけれど、今まで聴いた中ではColdcutがリメイクしたものがいちばん気に入っている。ハスキーな女性ヴォーカルをグラウンドビートにのっけて、唄を素直に生かした、彼らにしてはストレートで思い切り正攻法な作り方をしている。ストリングスをドラマティックに使ったnaked versionがいい。





LFO / Love Is The Message


LFOがまだWarpと契約する前にTommy Boyからリリースした作品で、アルバムヴァージョンとMoby、Beware of Bassのリミックスが収録されている。
リミックスよりオリジナルのほうがいいので、今となってはマキシとしての利用価値はあまりないかもしれない。
MobyがLFOのリミックスをやるなんて今の2人の音楽性の違いを考えたら意外だけど、この頃はMobyがミニマルなテクノを作っていたせいかあまり違和感を感じなかった。





Neneh Cherry /I’ve Got You Under My Skin


Cole Porterの名曲『I’ve got you under my skin』をNeneh Cherryがリメイク、hiphopのゴッドファーザーAfrica Banbaataaがプロデュースした作品でextended mix、instrumental、David Z remixの3曲入り。’90年にCircaからリリースされている。
地を這うようにうねるベースとそれに負けない迫力のNeneh Cherryのラップ&ヴォーカルがかっこいい。
ジャケットの渋いアートワークも曲とぴったり。





Bass-O-Matic / Ease on by


クレジットにWilliam Orbitの名前があるので、彼のプロジェクトのひとつだと思うのだけど、アルバム1枚を残して空中分解してしまった。
『ease on by』のリミックス他2曲入りのマキシ、’90年にVirginからリリースされている。タイトル曲は女性ヴォーカルをフィーチャーしたダブで、Orbitらしいアンビエントな仕上がり。Renegade Sound Waveのリミックスも。





The Grid / Heartbeat


元Soft CellのDave BallのユニットThe Gridのシングル『heartbeat』をBrian Enoがリミックスした作品で、4曲全部Enoによるもの。’92年Virginから。
Enoはほぼ同時期にアルバム『Nerve net』も制作していて、ここでのリミックスワークとシンクロする出来映えだと思う。
アンビエントシリーズに比べてリズムも音もタイトでソリッドとはいえ、少ない音の中に最大限の技巧が凝らされたところはEnoの本領発揮という感じ。
アンビエントシリーズがマンネリ化し始め、プロデューサーワークは別にして彼自身の作品にはすっかり興味を失っていた頃だったから、このリミックスは驚きだった。





Massive Attack / Unfinished sympathy


湾岸戦争の影響でMassive AttackがMassive名義で活動を余儀なくされた時期の作品。たしかメジャー契約後2枚目のマキシだったと思うのだけど、Virgin傘下のCircaからリリースされている。Paul Oakenfoldによるリミックス2曲とシングルヴァージョン、インストゥルメンタルを収録。
当時日本でも音楽業界人たちが大騒ぎしたけど、エポックメイキングな曲として未だ輝きを失っていない。
Paul Oakenfoldのリミックス2曲はMassive Attackのオリジナルに比べるとかなりマイルドで
個性に乏しく、物足りない気がしてしまう。





Oleta Adams / Rhythm of life


‘90年PhonogramからリリースされたOleta Adamsの『Rhythm of life』は一世を風靡したグラウンドビート。William Orbitが手掛けたリミックス3曲にアコースティックなバラードが1曲収録されている。
William Orbitという人はヴォーカリストのプロデュースがとても巧い。Beth OrtonからAll Saints、Madonnaまでヒットチャートにも名を連ねるシンガー達の作品によって、’90年代トッププロデューサーの地位を築いた彼のプロデュース初期作品。





St. Etienne / Only love can break your heart


日本でもフランスでも人気のあったSt. Etienneの’91年のシングル。creationから。Andrew Weatherallがリミックスした9分近いヴァージョンが面白い。原曲とはずいぶん違うイメージのヘヴィで暗めのダブが後半から次第に盛り上がっていく。この人って昔から変わらないなぁ。
St.EtienneとAndrew Weatherallなんてかなり意外な顔合わせじゃないかな。




23 december 2005






Certainly,Sir / Tan!


日本ではエレクトロニカ/アヴァンポップが人気があるせいか、このジャンルの店頭に並ぶ数がフランスよりも明らかに多い。ライセンスのみならず、海外アーティストを発掘する日本のレーベルも増えてきたようで、こちらでリリースされていないものを見かけるとつい買ってしまう。
このCertainly,Sirも1枚目はUKのspolitレーベルから、そして2枚目を日本の金沢のレーベルRallyeからリリースしている。
ボストン出身のデュオが作るのはUKのブルーアイドソウルやフォークを汲むポップソング。
かつてのstyle councilのように軽くてドライなUKソウルを電子音の中に響かせる。
古臭いチープなシンセの音がキッチュなのだけど、ジャジーなメロディーにハイトーンの男性ヴォーカルとは意外に相性がいい。1曲目は全ポップマニアを虜にしそうな好ナンバー。





Caural / Remembering today


Prefuse73のフォロワーという感じのヒップホップ+エレクトロニカ。ジャズや現代音楽のフレーズもサンプリングされていて、クールだけどポップさを十分に残している。
CauralはNY在住のZackary Mastoonというアーティストのプロジェクトのひとつで、今作が2枚目になるらしい。日本のP-Vineからのリリース。
悪くないけど聴くたびに物足りなさが残ってしまった。
最近よく『ポストPrefuse73』という見出しを見るけど、実際超えた人っていうのはなかなかいないような・・・
次に期待。




18 december 2005






Gravenhurst / Fires in distant buildings


これは今注目を集めつつあるプログレのエッセンスを散りばめた、とびきりお洒落なアルバムである。最近モードのランウェイではグラムやプログレが流行、ロックTシャツのフラッシュバックと共に音楽シーンでもプログレ風のものがちらほら出て来た。
Pink FloydとVelvet UndergroundにSoft Machineを足したような・・といえばいいだろうか。プログレとサイケとフォークが混ざったサウンドにナイーヴなヴォーカルが絡む、とても懐かしい感じのする’70年代風ロックだと思う。
このアルバムを買ったあと過去の2枚の作品を聴いてみたけど、素朴でフォーク色が強く、このアルバムにしばしば見られる、静かな曲にいきなりディストーションギターが鳴り響くようなドラマチックな展開はない。プログレ的要素が入り込んだのはこのアルバムが最初なのだが、新しい局面を見せたM-1やM-5、M-7などはPink FloydやCanを彷彿させ、今とても新鮮で目新しい。(ジャストタイミングにこういうサウンドを繰り出してくるWarpのファッション性って恐るべし)
モード・ピープルに話題性十分、きっと懐かし〜!と驚喜する人も。





Marc Hellner / Marriages


シカゴ在住の音響系アーティスト、Marc HellnerのPeacefrogからリリースされたデビュー・アルバム。10月頃買ったミニアルバムを聴いて、だいたいどんな音になるのか予想していたけど、ミニアルバムよりさらにポップで心地よく、オーガニックで瑞々しい作品に仕上がった。
Telefon Tel Avivの2人がプロデュース、ミックスなどで参加。Marc Hellnerはヴォーカル、プログラミングの他、楽器もいくつか演奏するようだ。
生楽器と電子音が巧みにブレンドされたモダン・アンビエント・ポップ。
メロディアスなヴォーカルがフィーチャーされていて、電子音をアコースティックに響かせるという点でポップという言葉を使ったけど、どのジャンルに置くか微妙な作品だと思う。ある店ではエレクトロニカ、別の店ではインディーロック、またダウンテンポや普通にポップスのコーナーに置く店も。どれにも当てはまり、ボーダレスっていうのとも違う微妙な音楽って今後もっと増えていくだろう。
アメリカ人だけど、メロディーが憂愁を帯びてどうもイギリスっぽい。Blue Nileが好き・・という彼のコメントを見て納得である。
Telefon Tel Avivが参加したという`らしさ`はアルバム全体に感じるけれど、まるでイギリスのフォークのようなメロディーがTTAのアルバムとはまた違う印象を与える。
時折挟み込まれる現代音楽風のインストゥルメンタルの硬質さが、リラックスしたヴォーカル曲を引き立てる好作品。




5 december 2005






Atomic Hooligan / You are here


日本に着いてすぐ買ったアルバムで、じつは滞在中ほとんどコレばかり聴いて過ごし、すぐに飽きるかと思っていたら今も1日に何度も聴いてしまう、ほとんど中毒症状に陥ったアルバム。
とりわけ熱心なブレイクビーツ・マニアでもないのに何がそんなに気に入ったのか自分でも不思議なのだけど、このアルバムの魅力はといえば、とことんヒップなのだ。
ヒップという言葉は私の最大級の賛辞で、世の中にヒップと呼べるものは実際のところ数少ない。キッチュとかかっこいいという感覚は知識でなんとかなりそうなものだが、ヒップというのはこれはもうセンスがものをいう、知識や経験でなんとかなるものでもない。
キレてるのにクール、快楽指数が高く、どれほどカッコよくバカげていられるか・・がヒップであることの条件だが、このバカげたクレイジーさというのはすごく難物で、一歩間違えば猥雑、陳腐にもなりかねない。そのぎりぎりの場所をうまく切り抜けたと感じたのが、彼らのこのデビュー・アルバム。
ポスト・ケミカルと呼び声高い彼らだが、このヒップという感覚が似ているという点でーー音は全然違うタイプだけどーーむしろポスト・ベースメント・ジャックスになり得る存在だと思う。
アシッドハウス以降のUKロックーーStone RosesやHappy MondaysからPrimal Screamへと続くロックの系譜を継ぐサウンド。といってもバンドではなく、トラックメーカーとターンテーブルを操る2人組。複数のヴォーカリストをフィーチャーしていて、それぞれに個性が違うのに不思議と雑多な感じはせず、まるでバンドの音みたいによくまとまっている。ヴォーカルは基本的に1曲にひとりで、エフェクトをかけまくり、それを素のままのヴォーカルとシンクロさせたりデカラージュさせる、そのエディットのセンスが凄い。ヘッドホンでヴォーカル・パートだけ追ってみても十分に面白い。どの曲もポピュラリティが高いけど、そのわかりやすさの抑止力になっているのは緻密でクールなトラックだ。’90年代半ば頃のUnderworldにも近いかもしれない。
それにしても今年はロック・アルバム当たり年かな?LCD SoundsystemにSoulwax・・・ここに真打ち登場という感じ。ロックがまた面白くなってきた。





Primal Scream / Higher than the sun


帰国の際、手荷物で持って帰ってきた12″シングルの中でもとりわけ大事な1枚。
‘91年発売の3曲入りシングルで、UKロック・クラシックスといってもいい名曲『Higher than the sun』をThe OrbとAndrew Weatherallがリミックスしている。
Andrew Weatherallのヘヴィなダブは全然古くなっていないし、この頃のAlex Patersonはそれは緊張感のある、いい仕事をしている。
アシッドハウスの狂躁が一段落し、アンビエントと呼ばれるチルアウト系サウンドが台頭し始めた時期。





Meat Beat Manifesto / Strap down


現在のブレイクビーツの元祖的存在なグループ。たぶんこれが最初の12″シングルだったような・・・’88年発売の3曲入りマキシ。
ヒップホップをベースにテクノやダブやパンクを放り込んで滅茶苦茶にシェイクした、いま聴いても強烈なブレイクビーツ・サウンド。縦ノリの太いビートから当時エレクトロ・ボディ・ミュージックという言葉が誕生した。
このあたりの音がAtomic Hooliganのベースになっているのは明らか。
この3枚を並べてみるとUKロックのいちばんエッジな線が見えてくる。