Archive for 10月, 2005

25 october 2005






Boards Of Canada / The campfire headphase

3年ぶり、待望の新作がリリース!!! この人達とAlphaはあまりにも好きなので、冷静に判断できないかも。 変わらないことに退屈するアーティストもいるけど、BOAに関していうと変わらなかったことにホッと安心してしまう。
緩やかなビートにどこかノスタルジックな童謡を思わせるメロディ、さざ波のように広がっていく残響とノイズ音が心地よくて、聴いていると身も心も丸ごとどこかにさらわれるかのような感覚に陥る。前作『geogaddi』で音の数が増えてぐっと深みを増したと思ったけど、このアルバムでもさまざまなコントラストのある音色が重ねられて、その印象はただ美しく儚いだけではない。音楽というのはすべての要素がスパークして輝きを放つのだということを改めて感じさせてくれる。
‘70年代のサウンドが注目されつつある今、彼らのサイケデリアは時代にぴったりなのだけど、このアルバムを前にするとそんなことはもうどうでもいいことのように思える。今のシーンの流れがどうあろうとこれは間違いなく時代を背負って立てるアルバム。そういう意味では本当に『孤高の』という言葉がぴったりな存在だ。とにかく売るためにコラボやフィーチャリングが全盛の今の時代に、まっすぐに自分たちの音楽性を追求できるアーティストがどれだけいるだろうか。
映画のサントラにも合いそうな気がするけど、音楽が映像を食ってしまう可能性が確実にある。ヴィクトル・エリセのような監督なら太刀打ちできるかな。
『geogaddi』をさらに上回る彼らの最高傑作だと思う。
またこれで3年は待てそう。





Pier Bucci / Familia


チリ人のクリエイター、Pier Bucciが初めてのフル・アルバムをロンドンのレーベルcrosstownからリリース。これまでにアナログを何枚かリリースしていて、人気のコンピ『suck my deck』シリーズに収録されたこともあり、アルバムが待たれていた。チリといえばRicardo Villalobosの名前が真っ先に思い浮かぶが、PeacefrogからアルバムをリリースしたLucianoもいる。
スウィートなヴォーカルをフィーチャーしたオープニング曲を聴いてポップ・エレクトロニカかと思ったけど、そのあとに続く曲はディープなクリック・テック・ハウス。
リズムがはっきりしていて、しっかりグルーヴ感があるから、もちろんフロアでも受けそうだけど、どちらかというとヘッドフォンでじっくり聴きたいアルバム。
クールなトラックにフォークロアなヴォーカルが差し込まれるM-6がゾクゾクするほどかっこいい。
ミニマルなクリック・ハウスのようで、じつはどこのジャンルに分類していいのかわからない複雑さがありーーエレクトロニカともデトロイト・テクノとも呼べるーーSwayzakみたいにジャンルを超えて人気を得るかもしれない。




24 october 2005






O.S.T『Broken Flowers』


ジム・ジャームッシュの映画はいつも音楽が印象的だから、ついサントラを買ってしまったりする。
『ミステリー・トレイン』のScreamin’ Jay Hawkins、『ナイト・オン・ザ・プラネット』のTom Waits、『デッドマン』のNeil Young・・・フィルムを通じて好きになったミュージシャンが何人かいるのだけど、今回の発見はエチオピアのミュージシャンMulatu Astatkeだった。
じつはこのMulatu Astatkeは初めて聴いたのではなく、Radio Novaで何度か耳にして、強烈に田舎臭いメロディがジャズ/ファンクにのっかって、じつにいい味出してる・・と気になっていたところなので、この映画の中で使われたのはうれしかった。
映画の中ではビル・マーレイに絡む隣人がエチオピア人で、過去の女性に再会するため旅に出る主人公に渡すカセットテープの中に古いエチオピアのレア・グルーヴが何曲か入っている、という設定。これらのノスタルジックな曲がビル・マーレイのとぼけた表情をますます可笑しくさせる。
Mulatu Astatkeのアルバムは、’70年代の作品がフランスのレーベルからアナログのみでリイシューされている。今も現役で活動中らしく、Screamin’ Jay Hawkinsのように人気が再燃するかも。




14 october 2005






Border Crossing / Ominous


エポック・メイキングなMassive Attackのファーストアルバムを思わせる、そしてすっかり拡散してしまったtrip hopという言葉を本当に久しぶりに体感ーーこの重低音の響かせかたは体感という言葉がぴったりーーした1枚。Border Crossingはウエスト・ロンドン出身の白人×黒人のトリオで、過去にmuteから数枚シングルを発表しているが、この『Ominous』がデビュー・アルバム。
ヒップホップ、ルーツ、ラガ、R’n'B、それにシネマティックなアンビエントがブレンドされた・・・と言葉にしてしまうとそういうミクスチャーはあるにはあったものの、これほどパワフルでかっこよく、かつメロディアスなポップさも兼ね備えた、魅力的なtrip hopには何年も出会わなかったような気がする。(エレクトロ全盛の今、これはいきなり繰り出されたカウンターパンチだ)
全編を通して感じるのは黒さと白さの微妙な均衡、ヒップホップやラガの熱さとクールなグルーヴの鮮やかなコントラスト。地を這うようなヘヴィな低音の迫力とストリングスやアコースティック・ギターの音色の繊細さは、MP3では絶対に味わえない。CDを買って、出来る限りいいサウンドシステムで聴いてほしい。ライヴを見るのがいちばんかも。今のところパリでのコンサートの予定はないので、ロンドンまで見に行ってしまおうか・・・





Soulwax / Nite versions


2 many DJ’sの変名プロジェクトであるSoulwaxの新作は、昨年発売されたアルバムをリミックスした裏アルバム。彼ららしい骨太なディスコ/ロック・チューンがノンストップで怒濤のごとく展開される。
オープニングの『teachers』は、Daft Punk(’96)のカヴァー。オリジナルにほぼ忠実なリメイクはDaft Punkへのリスペクト?
DFAとの共作である『another excuse 』が凄い。今ノリにノってるDFAの実力を見せつける、切れ味のいい、というよりもうキレかたがハンパじゃないディスコ・チューンは圧巻のひとこと。この1曲だけでもこのアルバムを買う価値があると思う。
ジャケのデザインはPlaygroupことTrevor Jackson。いくらミュージシャンとして有名になっても本業(?)もちゃんとやってます。




9 october 2005






Marc Hellner / Asleep on the wing


Peacefrogから届いたばかりのミニアルバム。まだアルバムも出ていない新人アーティストなのだけど、Telefon Tel Avivのプロデュース作品ということでオーダーしてみた。
独特の空気感を漂わせる、アンビエントなアルバムはCraig Armstrongをかすかに彷彿させる。 室内楽風あり、フォークあり・・で、なんともとりとめがなく、このミニ・アルバムでは実体が見えにくいのだが、他にはない個性を感じるので、今秋発売のフル・アルバムが楽しみ。
TTAはプロデュースだけでなく、リミックス、演奏、エンジニアもこなしているので、彼らにかなり近しい存在のミュージシャンと思われる。





S-Tone.inc / Luz Y Sombra


5月にリリースされたという情報がありながら、店には置いていないし、ネットで注文しても待てど暮らせど届かず、入手するのに何ヶ月もかかってしまった。S-Tone.incの新作で、Schemaからのリリースなのになぜ??
こんな秋風が吹く季節ではなくて、初夏に聴きたかった・・という不満はさておき、久しぶりに耳にするStefano Tironeの軽やかで繊細なブラジリアン・サウンドに胸が躍る。
S-Tone.incはSchemaの中ではポップなほうで、ラウンジ色が強かったけど、今作はぐっとジャジーに。
彼の身上である、弾けるようなポップさがないのは残念。でも、これまで以上に丁寧に作り込まれていて、聴くほどに味わいを増すアルバムであることは確か。何度か聴いているうちに彼の最高傑作かも・・・という気がしてきた。
シングルの『dreamer』は、ジャイルス・ピーターソンなどクラブジャズ系DJのプレイリストに頻繁にあげられる。




2 october 2005






Jackson and his computer band / Smash


今年Warpが契約したニューカマー。バンドと名前がついてても、Jackson Fourgeaud(フランス人?)というアーティストのソロ・プロジェクトと思われる。
さまざまなジャンルが混ざったポスト・エレクトロニカ・・というより、これがもはやエレクトロニカの現在進行形。どんな電子音を使って、ミニマルな曲の中でどう響かせるか、を競った’90年代と違って、今は変わった電子音は当たり前、それより唄やラップの中でどんな風に電子音を響かせるか、というステージにきていると思う。(レーベルメイトのAutechreやLFOはすっかり`クラシック`になってしまったような・・・)
このアルバムも電子音と生音、もともと対局にあるはずのエレクトロニカとファンクやソウルが絶妙にブレンドされていて、クールなサウンドの奥にしっかりグルーヴ感がある。
10/8にパリのTrabendoでコンサート。Jamie Lidellもそうだけど、この人も1人でいろんなパフォーマンスをやりそう。ぜひ見てみたい。





The Tape vs RQM / Autoreverse


ドイツのレーベルKitty-yoからリリースされた新人アーティスト。Tapeというエレクトロニカ系のクリエイターとRQMという白人ラッパーが組んだコラボ作品のようだ。
エレクトロニカ、ヒップホップ、ダブがミクスチャーしていて、Prefuse73と方向は同じだけど、それほど激しくカットアップされていないし、もっとヒップで聴きやすい。とくに生音の使い方がうまくて、1曲目のアコースティツク・ギターをフィーチャーした曲やルーツっぽいダブ、中でもインストの曲がすごく感じいい。
こちらもパリで10/25にコンサート。