Telefon Tel Aviv / Immolate Yourself
サンフランシスコのデュオTelefon Tel Avivの待望の新作にしてオリジナルメンバーとしては最後のアルバム。
最後というのはデュオの片割れ、Charles Cooperがアルバム発売前日に亡くなったため。解散ならあきらめるけど、このニュースは悲しすぎて……
おまけにこの最後のアルバムが新たなページを開いた感じで、面白いと思っただけに何ともやりきれない。
時代の空気を巧みに読みながら、それを自分たちのサウンドの中に溶かし込んできた彼ら……前作とは打ってかわって今度は’80年代前半のエレクトロ/ニュー・ウェーヴの香りがたっぷり。’80年代のブルー・アイド・ソウルっぽいニュー・ウェーヴへと触手を伸ばすような動きも少し感じられる今、このアルバムはすごく新鮮な感じがする。
一周回って誤解されそうな場所だけど、あえて正面からキッチュなニュー・ウェーヴに取り組んだ勇気はさすが。
デビュー当時からグリッチらしい音を出す人たちだったけど、もうそんなことには興味がなくなったのか、従来のグリッチからは完全に抜け出している。
今や大量に売れるポップ・ソングですらグリッチっぽいものは溢れていて、あのグリッチの音が少々古く感じられる時期にきているので、これは大正解かと。
前作の評価とセールス的成功でそのスタイルを決定したのかと思いきや、あっさり次のステージへと向かう姿勢には拍手を送りたい。
Joshua EustisひとりになってしまったTTA…ぜひとも続けて欲しい。
Helios / Caesura
UKのレーベルTypeからリリースされた静謐で美しいエレクトロニカ/アンビエント
作品。
アコースティックギターやピアノのメランコリックな旋律がシンプルで硬質なビートと絡み合い、柔らかなシンセがレイヤーする。
それぞれのパーツが主張しすぎず、サラリと聴いてしまえるところは地味といえば地味だけど、眺めていると少しずついろいろなものが浮き上がって見えてくる淡いパステル画のように味わい深い。
ジャケットは冬の風景だけど、今の清冽な早春の空気にしっくりくる気がする。
Murcof / The Versailles Sessions
素晴らしすぎるMurcofの最新作!
『The Versailles Sessions』というタイトルのこのアルバムは、2007年にヴェルサイユ宮殿で行われたイヴェント、”Festival Of Sound,Light and Water”の為に制作されたサウンドのドキュメント。おそらくLiveの録音ではないだろうか。
前のアルバムも最早エレクトロニカというジャンルでは表現できないものになっていて、SF映画のサントラみたいだなぁと思ったけど、これは一層すごい。
武満徹みたい!まるで現代音楽だ。
ヴィオラやハープシコード、メゾソプラノを使った初期バロック風音楽。そこに尺八みたいな笛(フルート?)がアブストラクトに入ってきて、ものすごくアヴァンギャルドなバロック音楽になっている。
時おり挟み込まれるのは17世紀フランスのバロックの音楽家Marin Marais(アラン・コルノーの映画『Tous Les Matins Du Monde』で描かれた音楽家)の曲のフレーズ。
初期バロック音楽の規律正しさと深い憂愁が、宇宙のようにだだっ広い音の空間の中に見事に再現されている。不思議なことだけど、こんなにバロック音楽と宇宙的なものの相性がいいとは思わなかった。
こんな心底ヨーロッパ的な音楽を作る人がメキシコ人だなんて不思議な感じがするけど、神秘的というか魔術的というか…そういう部分でメキシコとヨーロッパは案外似ているのかもしれない。
さて、次はどんなアルバムを作るんだろう。
Fennesz / Black Sea
何枚目になるのかわからないけど、Fenneszの新作。
叙情的で、聴けば聴くほどじんわりと心に染みる。
繊細なノイズが重なり合い、さざ波のように拡散していく。そしてその隙間から現れるギターの音色がなんともドラマティック。
このジャンルの特徴でもある映像的、情景的というより、歌をもった音楽のようにもっとダイレクトに人の心にコミュニケートしてくる感じ。だから純粋にアンビエントと呼べるものではないかもしれない。
シューゲイザーのようでもノイジーな凶暴さはないし、柔らかく、メロディが美しい。そして不協和音がないせいか聴きやすい。
クラシック好きな人でも気に入るんじゃないだろうか。
いいアルバムだなぁ、これ。何度もリピートしてしまう!

Koushik / Out My Window
カナダ出身のトラックメーカーKoushikのニュー・アルバム。
ヒップホップを基調としたビートにソフトロックやシューゲイザーを振りかけたよう。コーラスの使い方は’60年代風で懐古的だし、本人が語っていた通りMy Bloody Valentineの影響も感じられる。
この人、インド系カナダ人なのだそうだが、アルバム全体に漂うサイケデリアの匂いはいかにも彼のルーツっぽい。
西海岸のプロデューサー、NobodyのプロジェクトのBlankblueに少し似てるかも。
ヒップホップというよりはポスト・ロック的。メロディアスでポップで聴きやすい。ちょっと投げやりでアンニュイなヴォーカルも素敵。

Tommy Guerrero / Return Of The Bastard
プロスケーターにしてミュージシャン、グラフィックデザイナーでもあるTommy Guerreroの最新作。
スケーターというとなんだかハードコアな曲を好みそうなイメージがあったけど、このアルバムはアコースティックで即興的、ほどよく肩の力が抜けた感じ。
ほとんどがギターをメインにしたインストゥルメンタルで、音の少ない、スカスカした音の隙間が頼りないというよりは、そのシンプルさが魅力になっている。気持ち良さそうにギターをつま弾いてる姿が目に浮かぶような・・・
どの曲も短くて、40分たらずで聴き終えてしまう。素朴で素っ気ないぐらいだけど、不思議と飽きない。
夏の日というよりはインディアン・サマーに向いてるかな。

Dusk & Blackdown / Margins Music
いかにも国際色豊かなロンドンらしい、エスニックな魅力満載のダブステップ傑作アルバム。
ロンドン在住のプロデューサー2人によるデビューアルバムで、keysoundというレーベル(まだDusk & Blackdownしかリリースしてないようなので自身のレーベル?)からのリリース。
ボリウッドにバングラ、アフロ、ジタン、ラガ・・・ユダヤからはS.ライヒ、ジャパネスクは和太鼓を織り交ぜて、その探究心、ミクスチャーぶりはとどまるところを知らず。
深〜い音響効果とヘヴィなビート。トリップホップやグライム、ダブステップやミニマル・・といろいろ混ざった、これはもはや進化系ダブステップ作品といったほうがいいかも。
ロンドンという都市の懐の深さを見せつけられた1枚。
COOOOOL!!

Various Production / Versus
タイトル通りVarious Productionの過去のリミックス作品+他のアーティストによるリミックスを集めたオムニバス。
こうやって彼らのリミックスを聴くとダブステップとポップ/ロックをつなぐVariousのポジションがくっきりと浮かび上がってくる。もちろんアンダーグラウンドなダブステップではないけれど、これほどメロディーをしっかり際立たせながら大衆性に落ち込むわけでもない。どちらのジャンルにも属しようがない、微妙な立ち位置といえばいいだろうか。
『Hater』をリミックスしたZombyはKode9のレーベルhyperdubのニューフェイス。Burialみたいにディープなアンビエント感があるので、まもなくと噂のデビューアルバムが楽しみだ。